Vocaloidのしくみ - なぜ、こんなにもリアルなのか?
音楽の長い歴史において、業界に大革命をもたらしたと誰もが認める技術と言えば、「シンセシス」、「MIDI」、「サンプリング」が挙げられます。これらに代表される革新的、かつ偉大な発明は、めったに現れるものではありません。しかし、この「歌声合成」技術はまさにその一つ、音楽制作の歴史を変える偉業と言えるでしょう。現在、ほとんどのアコースティック楽器は様々なシンセシス(合成)技術をもってしてコンピュータ上でリアルに再現可能となっていますが、歌声に限っては、リアルに再現する事が技術的に大変難しく、その試みもことごとく失敗に終わっていました(YAMAHAがこのVOCALOID技術を開発するまでは)。ご承知の通り、歌声には数え切れないほどのアーティキュレーション、音色、音から音への移行音があります。また、歌は他の楽器と大きく違い、言葉とメロディの両方を表現します。これだけ見ても、歌声を再現することがどんなに大変であるかがわかる事に加えて、我々の耳はこの”声”と言う楽器を最も聞きなれてしまっている為に、ほんの些細な音の切れや微妙な違和感に敏感に気が付き、たやすく偽物を聞き分けてしまうのです。ところが、この VOCALOIDは、全く新しい歌声合成技術を採用することにより、この歌声を再現するという分野において革新的な飛躍を遂げることができました。 YAMAHA(日本)アドバンストシステム開発センターのメンバーは、驚くほど肉声に近い歌声を合成するソフトウェアの開発に成功したのです!
そこで、Zero-G社とクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の開発チームはYAMAHAと密接な共同作業のもと、VOCALOIDエンジン用のボーカル・フォント(=バーチャル・シンガー)の開発に取り組みました。まず、プロのシンガーに ”すべて” の英語の音素(母音、子音など)、及び音節から音節への移行音を発音して(歌って)もらい、それをレコーディングします。各移行音は、音素の組み合わせにより一つ一つが微妙に違います。この違いにより、我々は言葉を認識し、また、歌声がナチュラルかそうでないかを決定付けます。例えば、”p” の発音一つにしても、単語の先頭にある ”p” と終わりにある ”p” では微妙に発音が違います。また、”p” と ”t” では、その後続く母音の発音にも違いがあります。
こうしてレコーディングしたプロ・シンガーの発音データは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)にて周波数領域へ変換処理を施された後、数千種類にも及ぶ要素に分類され、VOCALOIDエンジン用の発音データベースに保存されます。また、ビブラート、ピッチ・ベンド、アタックなどの声の表情データも、実際の人間の歌声から抽出され、音楽表現(表情)データベースに保存されます。
無限の可能性
このYAMAHAの歌声合成技術が未来に及ぼす影響は計り知れません。現在はVOCALOID時代の創世記であり、『LEON』と『LOLA』は VOCALOIDのアダムとイブです。そして、実在する著名シンガーをバーチャル化した『MIRIAM』、そして初の日本語VOCALOID『MEIKO』は、VOCALOIDを更に一歩先へと進化させます。バーチャル・シンガーの合成された歌声があたりまえになる日も、そう遠く無いでしょう。新しい時代に乗り遅れないよう、早速VOCALOIDをあなたのスタジオに迎えましょう!
ヒューマン・ボイス
”楽器”を ”音楽を奏でるもの” と定義した場合、ヒューマン・ボイス(歌声)は、音楽クリエーターにとって最も豊かに感情を表現することができ、最もコストが高くつく”楽器”と言えます。 もちろん、自分に歌唱力がある場合や、必要な時にすぐ来てくれる専属シンガーがいるなら別ですが、通常は自分のイメージに合うよう歌ってくれるシンガーを探し出すだけで一苦労します。
そして、これまで数々の発展&飛躍を遂げてきたコンピュータによる音楽制作環境においても、肉声とほとんど区別がつかないくらいリアルな歌声を合成するには技術的に限界があり、実現不可能とされてきました。従って、音楽クリエーターが自分の曲にクオリティの高い歌声をつけようと思った場合は、未だに「自分で歌う」か「シンガーを探す」、或いはボーカル・フレーズを収録したサンプリングCDを利用する(ただし、この場合は歌詞や表現が限定される)しかないのが現状です。
それがついに、過去の話となる時代が来たのです!
コンピュータ音楽制作業界に真の革命をもたらす歌声合成ソフトウェア
この度、YAMAHAが開発した歌声合成ソフトウェア「VOCALOID(ボーカロイド)」は、”歌声”についての今までの制作側の常識を見事に覆します。むしろ、制作側の長年の夢を遂に実現した、と言う表現の方が適切かもしれません。VOCALOIDは、非常にリアルにヒューマン・ボイス(歌声)を合成する、歌声合成ソフトウェアです。この素晴らしい発明により、ソフトウェアによる”歌声”という楽器で、あなたの曲を自由に表現することが可能になりました。これから続々登場する "バーチャル・シンガー"達が、あなたの思い通りに歌ってくれるのです!
VOCALOIDは実在するプロ・シンガーの声のサンプリングを基に高度にデータベース化された音声合成ソフトウェアの総称です。VOCALOIDをコンピュータにインストールすれば、彼、彼女らはクオリティの高いその歌声で、普通の歌詞はもちろん、くだらない言葉フレーズからモンテベルディの叙情的なマドリガーレ、果てはお経のようなチャンティングまで、文字通り"どんな"言葉でも歌ってくれます。あなたは、言葉を入力して、表現力をプログラムするだけ。VOCALOIDはあなたの指示通りに従順に歌い、生身のシンガーの役割を果たしてくれます。さらにVOCALOIDの扱いに慣れてくれば、 VOCALOIDの歌声をバーチャルだと見破れる人は恐らくいないでしょう。その歌声を耳にした人からの問いかけは、「これ、何のソフトを使っているの?」ではなく、常に「これ、誰が歌っているの?」です。
セッション料が一切かからない、専属のリード・シンガーとバック・ボーカリスト
VOCALOIDでは、プロ並みのバック・ボーカルを簡単に作成することができます。もちろん、複雑なハーモニーやアレンジもOKです。更に VOCALOIDを操作する力が上達すれば、搭載されている「歌声に表情付けをするツール」によって繊細なニュアンスさえ加える事が可能となり、リード・ボーカルに採用してもおかしくないくらいリアルな歌声を作成する事ができるでしょう。そう、VOCALOIDは最新ヒット曲のボーカルとして君臨する可能性を秘めているのです!
コンピュータを使った新しいミュージック・クリエーションの形
VOCALOIDがあれば、これからは感情をよりダイレクトに制作している楽曲へ反映させることが可能になります。ジャンルを問わず、如何なるミュージック・クリエーションにおいても、実際に人を使わずにして人らしさ(=感情)を加えることができます。音楽クリエーターは、VOCALOIDという専属のプロ・バーチャル・シンガーに、思うがままの指示を与え、そして歌わせることができるのです。スキャットさせる(意味のない言葉でメロディを歌わせる)こともできます。楽曲へ新たに音色を加えるのと同じような感覚で、あっという間にハーモニー豊かなバック・コーラスを付ける事もできます。どれをとっても、驚くほどのリアリティ・・・。音楽クリエーターは、ヒューマン(人間)世界とマシーン(機械)世界の狭間で、ヒューマン・ボイスとシンセサイザーの混血であり最高のアンドロイドVOCALOIDと共に曲を作っていくことになるのです。あなたの想像力次第で、可能性は無限に広がります。
可能性はクリエーター次第
音楽制作における一つの手段として、単純にVOCALOIDに歌詞を歌わせるという使い方もよいでしょう。或いは人間界の常識を打ち破るべく、斬新かつ実験的なボーカル・エフェクトとしてVOCALOIDを試してみるのもよいでしょう。VOCALOIDの音域は果てしなく広く、どんなに離れた音へ飛んだとしても(希望とあれば)その音を全く狂い無く正確にとらえ、また、人間の限界を超える速度で歌わせることが可能です。そしてなにより、VOCALOIDはどんなに困難な指示を出されたとしても、疲れることも無ければ、一切の文句を言う事もありません!
更にVOCALOIDは、考えつく限りのどんな言葉でも、どんな音節の組み合わせでも歌うことができるのに加え、いかなる母音(または音を発する子音)でも、完璧なレガートでどこまでも長く歌いつづける(発音し続ける)ことが可能です。予め用意されている数種類のナチュラル・ビブラートから希望のタイプを一つ選び、それを希望の音にドラッグ&ドロップして割り当てます。あとは、発音する長さとビブラートの量を決めるだけ。VOCALOIDはリアルな伸びのある美しい声で、滑らかに歌うことでしょう。
・・・以上は、Vocaloidの実力のほんの一部です。
- 音節/音素の変更(「liddle」を「little」に変更する、など)
- 各ノートのタイミング(正確な位置/長さ)
- ビブラート(ビブラートの種類/位置/量/振幅を変更可能)
- ボリューム(音量)
- アタック
- クレッシェンド/ディミュニエンド
- ピッチ・ベンド(量/時間ごとの位置)
- グライド(=ポルタメント)
- レゾナンス(周波数/帯域幅/アンプリチュード)
- ハーモニクス
- ノイズ
- ブライトネス
- 透明度
- 性別特徴